近年、日本全国で頻繁に発生している未曾有の災害。それに伴い全国各地で大規模な停電が発生することも珍しくありません。
そんな中、いま停電対策として注目を集めている『LPガス非常用発電機』。
発電機といえばディーゼルを燃料とするものが多い中、“なぜLPガスなのか”。その理由を、LPガス非常用発電機の仕組みから徹底解剖します。
【目次】
1.LPガス非常用発電機の仕組みとは
2.停電時はセンサーが感知して自動運転!
3.万一の時もLPガスなら安定供給
4.LPガスは半永久的に保管できる
5.発電だけじゃない!食事も、お風呂も、空調も!
6.LPガス非常用発電機にかける想い
“LPガスで発電する”という仕組み自体が、あまりイメージできないという方もいるのではないでしょうか?
そこで初めに、LPガスで発電するシステムから簡単にご紹介します。
LPガスは通常、LPガスバルク貯槽やLPガスボンベで保管されるのが一般的です。バルクとボンベのどちらに保管するかは、貯蔵量や貯蔵スペースなどによって決定します。
そして停電が発生すると、非常用発電機にLPガスの供給が開始。LPガスを燃料として、非常用発電機内のエンジンが稼働します。次に、このエンジンを動力として回されるのがオルタネータという電気を作り出す機器が稼働します。身近なところでいうと、自動車の中で電気を生み出すために使われているパーツです。こうして作られた電気が、停電時に建物に供給されます。
「停電時に非常用発電機を稼働させるためには、どうすればよいのだろう?」
「何か切り替えボタンを押すのだろうか?」
と心配される方もいるかもしれません。しかし、実際は何もする必要なく稼働させることが可能です。
非常用発電機を設置する際に、同時に電源切替盤も設置します。停電が発生すると、この電源切替盤内にある電圧センサーが停電を感知。そして、電源切替盤から非常用発電機に信号が送られ、1分以内に自動的に電力供給が開始されます。
※発電機に切替盤が内蔵されているケースもあります。
非常用発電機を設置する際、LPガスの貯蓄量は3日分を目安に検討します。発災後、3日間程度は応急対策活動期とされていることから、発災後3日間は救助・救急活動を優先させる必要があります。そのため、災害が発生してからの72時間というのは救助・救急活動が最優先に行なわれ、ライフライン復旧などの支援はその後になるので、3日間は自力で過ごせるよう準備しておくことが望ましいとされています。しかし近年、台風や地震の影響で、1週間以上停電が続くことも…。そうすると、電気が復旧する前に、貯蓄している燃料が不足するという事態が発生する恐れもでてきます。その状況を回避するためには、燃料が尽きる前に、新たな燃料を補給しなければなりません。
では、LPガスはどのように補給するのでしょうか。基本的にLPガスは販売業者が供給します。災害時もしっかりと供給できるのか不安視されるかもしれませんが、LPガスは非常に災害に強い燃料だと言われています。災害時の供給、配送体制も整えられており、実際、平成28年の熊本地震や平成30年の北陸地方の豪雪、日本各地で観測史上最大風速値を更新した台風21号が発生した際も、LPガスの供給は途絶えることがありませんでした。つまり、LPガスは災害に強い燃料であると言えます。
供給の観点からLPガスは災害に強い燃料であると前述しましたが、実はもう1つ理由があります。
それは経年劣化がしにくいということです。災害はいつ発生するか予測できないため、常に備え続けなければなりません。そうすると、長期間保管する必要があります。
軽油をはじめとする液体燃料の場合、長期間の放置や極端な温度条件下での保管により成分が変質して劣化してしまいます。条件によりますが、最短で1ヶ月程度の期間を放置するだけで始動不良・始動不調に陥ることも…。石油連盟によると、軽油の保管期限はおよそ6ヶ月が目安とされており、燃料の定期交換などのメンテナンスに非常に手間が掛かります。
一方で、LPガスはほとんど劣化することがありません。そのため、いつ起こるか予測のつかない災害時の非常用発電機の燃料としては最適です。肝心な時に燃料の劣化が原因で発電機が満足に稼働しないなどの心配がありません。
LPガスは非常用発電機を稼働させることはもちろん、LPガスそのものとして使用することができます。つまり、ガスを使った調理やお湯を沸かすことが可能となります。災害時は食事の確保はもちろん、衛生面などの配慮も必要です。
LPガスの非常用発電機なら、電気だけでなく、平時と変わらない生活を営むための設備を可動させることができます。目安としては、500kgのLPガスで、約100人の被災者に対して、調理・入浴などを7日間提供が可能です。またLPガスを燃料とする冷房・暖房空調機器も稼働させられます。
今年で発生から12年を迎えた東日本大震災。災害発生当時は、ライフラインの復旧、非常時のエネルギー確保等、さまざまな問題に直面しました。中でも大きな問題となっていたのが、電力の確保。その頃はガソリンや軽油を燃料とする発電機が主流でしたが、深刻な燃料不足により発電機を稼働させる事ができず、十分な電気を確保できませんでした。
一方で、LP ガスは早期に復旧したものの、それに対応した発電機がありませんでした。そうした背景から生まれたのが、LPガスの非常用発電機です。現在では、国のエネルギー政策においても、LPガスは「災害時のエネルギー供給の最後の砦」と位置付けられ、有事に活躍するエネルギーとして大いに期待されています。
東日本大震災の教訓を活かし、万一の時にしっかりと人々の命を守る。それが、LPガスの非常用発電機の役目です。